トーキョーバイクのホームタウンともいえる千駄木のよみせ通り沿いにある美容室「ウルワシ堂」。
青い壁とレンガタイルが印象的な素敵な店構えに惹かれて、いったいなんのお店なんだろう?と観光客の方もお店を覗き込んでいきます。
そんなウルワシ堂を営んで19年になる下田さんご一家。
ご主人のカズさんは、トーキョーバイクが根津にお店を構えたときから、現在3台目となるトーキョーバイクに乗っています。
9歳の長男、葉くんもlittle tokyobike からTOKYOBIKE Jr.へとすでに2台目のトーキョーバイクに。
いわば、”トーキョーバイクファミリー”ともいえる下田さんご一家に、自転車のある親子の暮らしや、自転車の楽しみ方について伺いました。
お父さんのカズさんと9歳の葉くん
――自転車は「だいじなともだち」
葉くんが自転車に乗り始めたのは幼稚園の年長になったころ。
自転車を買いに行って初めてまたがったときから、補助輪なしで乗ることができたそうです。
奥様(以下ナオさん):「実は、キックバイクを乗っている期間が長かったんです。10歳年上の長女が自転車の練習をしたときに、教え方に本当に苦労して、町屋の信号や道路がある公園(荒川自然公園 交通園)で練習したんですが、見かねた公園のおじさんがハンドルを握って一緒に走ってくれて、ようやく乗れるようになりました。」
自転車の乗り方は、身体の感覚で覚えるもの。大人が教えるにも、いざ感覚を伝えようと説明するとなかなか難しいものです。
キックバイクであらかじめ感覚を掴んでおく、というのは自転車上達のために大きいようです。
葉くんの初めての自転車は、little tokyobike の色名にちなんで「ピーコック」と呼ばれ、本当に大切な友だちのように乗っていました。
当時のウルワシ堂のブログには、葉くんとピーコックの心温まるエピソードが書かれています。
またウルワシ堂のHPには、当時の葉くんが描いた「ピーコック」のイラストが使われています。
――日々のささやかな移動も、楽しい家族の時間
2台目となるヴィンテージオレンジのTOKYOBIKE Jr.に乗り始めたのは、小学2年生になってから。現在1年半くらいです。
プールやピアノ、体操教室などに通う移動の際には、お父さんと乗ることが多いそうです。
カズさん:「小学生になってからは、休日が合わなくなってしまったので、自宅からお店まで乗るだけでも『え!ほんとに!?』って、ちょっとした移動の時間でもすごく楽しんで、喜んでくれるんですよね。乗り始めたころは、家の近所や坂道を下るだけでも、こんなに嬉しそうな顔をするんだなぁと思いました。自分もこうだったのかなぁ、と思いましたね。」
葉くん:「風が顔にあたるのが涼しくて、とっても気持ちがいい。ちょっとの距離でも乗っていたい!ってなる。」
サイクリングというほどの遠出でなくても、お子さまにとって自転車に乗るということは、新鮮で感動する体験なのですね。
日々の暮らしの中で家族の自転車の時間を楽しんでいるようです。
素直な感性で楽しんでいるお子さんの姿を見て、大人も子どものころの気持ちを取り戻せるかもしれません。
――自転車の危険は実演で教えてあげる
楽しいとつい夢中になって、転んでしまったり、ぶつかってしまったりしないか、周りに注意を配れているか、など心配になることもある、とカズさん。
水の溜まったマンホールやちょっとした段差など、車や歩行者だけでなく、道路にも気をつけるポイントがあります。
葉くん:「ちょっとした段差でサッと行こうとしたんだけど、(段差にタイヤがとられて)倒れちゃって、頭は打たなかったけど手がすごく痛かった。」
カズさん:「お父さん実演したことあるもんね。段差に対してこのぐらいの角度で自転車を滑らすと倒れちゃうから、もう少し角度をつけたほうが良いんだよってスローで見せたりしました。」
葉くん:「段差気をつけてねー!角度つけてね―!って何回か言われたことがあるね。」
大人でも、気をつけていても滑ってしまうことはあります。
何度か経験して、コツを掴んでいくというのもありますが、ゆっくりと実演して見せてあげることで、お子さんの理解も深まります。
――家族のキーワードは、「今日のご飯は?」
ナオさんと葉くんが一緒に自転車に乗るのは、お店から自宅までの帰り道が多いそう。
帰り道は、その日にあった出来事をたくさんおしゃべりしたい時間です。
ナオさん:「いつも一列で走るようしていますが、話したいことがあると隙きあらば横並びになろうとするんです。そうするとまた、『一列!』と注意するんだけど、最近は人がいなくなると『ちょっと二列になりま〜す』と言って並んできたりします。」
葉くん:「お話するのは、学校であった出来事とか、学童でのこととか。でもいつも話すのは、『今日のご飯なに?』って。まだぼくが二人乗りでお母さんの後ろに乗っていたときから、必ず聞いてる。ぼくはきのこが大嫌いなんだけど、お母さんにふざけて『きのこご飯と、きのこのお味噌汁』って言われて、『うわぁ〜』って言っちゃった。」
このエピソードを伺ったとき、わたしもそうだったなぁ…と、自転車での母との帰り道を思い出しました。
一日の最後のご飯は、どんなときでも楽しみなものですね。家族の会話が弾む瞬間です。
ナオさん:「実は、カズさんも娘もみんな必ず聞いてくる質問なんです。ほとんどメールなど使わないカズさんが、毎日『今日の夕飯は?』って聞いてきたり。」
カズさん:「長女も車で迎えに行くと、必ず『ただいま、今日の夕飯なに?』って言いますね。」
なんと、葉くんだけでなく家族全員が気になっている、今日のご飯。
仕事に、勉強にと、それぞれ忙しくしている家族が囲む、団らんの食卓が目に浮かびます。
外食のときもあれこれたくさん頼んで、お店の人から頼みすぎを心配されることもあるそう。それでも足りないくらい、ぺろりと食べきる食いしん坊なご一家のようです。
――一番のおすすめは、卵とトマトの半熟炒め。
トーキョーバイクのお客様は、グルメな方が本当に多く、お客様から美味しいお店を教えていただくこともしばしばあります。
そんな下田ファミリーの、千駄木から自転車で行けるオススメのお店を教えていただきました。
カズさん:「あそこおいしいよね、駒込の中華『炒め処 寅蔵』。」
葉くん:「あー!(手をトントンして)あそこの卵とトマトの半熟炒めがぼくは一番好き。すっごくおいしいんです。卵が半熟で、トマトも甘みがあっておいしい!」
カズさん:「『寅蔵』はウルワシ堂の向かいの道を真っ直ぐ、駒込駅も越えるくらい行くとつきますよ。」
葉くん:「餃子も普通のと違って、寅蔵のは皮がパリパリですっごくおいしい。黒酢酢豚も!」
葉くんの止まらない寅蔵愛で、すっかりお店に行ってみたくなりました。
他にも、家族が知らない駒込の銭湯を知っていたり、戦国武将や歴史に詳しかったりと、大好きなものについてきらきらとした笑顔で語ってくれました。
あらゆることに興味いっぱいの小学生。
サイクリングというほどの長い距離でなくても、親子で過ごす自転車の時間は、子どもの成長や関心について知ることができるかけがえのない時間になります。
日々の暮らしのささやかな部分に、自転車という道具が寄り添っているのだなと感じました。
これからますます大きくなって、一人で自転車に乗るようになったら、きっとまた新しい発見をたくさんしてくれるんだろうな、とわたしたちも楽しみです。
素敵なお話をたくさん、ありがとうございました!
(谷澤)
お話の最後に、葉くんに今の自転車を描いてもらいました。