TALKIN’!トーきん! 〜きんちゃんとあのひとのおしゃべり〜 最終回ゲスト:HAGISO 代表 宮崎 晃吉さん & Backpackers’ Japan 取締役CBO 石崎嵩人さん

TALKIN’! トーきん! | 2022.12.20

TALKIN’!トーきん! 〜きんちゃんとあのひとのおしゃべり〜、最終回は、10月に開催されたトーキョーバイク初の野外フェス「TOKYO BIKE FES -Time to cheers! 」での「HAGISO」代表・宮崎晃吉さん(以下、宮崎さん)、「Backpackers’ Japan」取締役CBO 石崎嵩人さん(以下、石崎さん)とのトークショーのもようをお届け。
 
トーキョーバイクを長年知っていて、きんちゃんとは飲み仲間でもあるお二人と、20年続いてきたブランドの『らしさ』とこれからについておしゃべりしました。

 

きんちゃん

金井一郎、tokyobike代表。スタッフからも街の人からも”きんちゃん”と呼ばれている。

宮崎晃吉

「HAGISO」代表。40歳を機に髪型を息子さんと同じおかっぱにしたんだそう。

石崎嵩人

「Backpackers’ Japan」 取締役CBO。最近は写真にハマっているそう。今回のトークショーの進行担当。

石崎さん
今日はよろしくお願いします。では、まず皆さんの自己紹介からお願いします。
 
きんちゃん
僕はきんちゃんと言います。元々は(トーキョーバイク1号店があった)谷中に来た時に、きんちゃんていうあだ名になったんですけど、知り合いと初めて行ったお店で「お名前は?」って聞かれて。
一緒に行った人がカンダさんだったから、そこで『かんちゃん』って呼ばれたんですよね。で、じゃあ僕は金井だから「きんちゃん」だって言ったら、もうそっからきんちゃん、きんちゃんって呼ばれるようになって。結局、みんな僕の本名を知らないまま仲良くなっていってね。
 
石崎さん
そうだったんですね
 
きんちゃん
それからはもう谷中を歩いてるとみんなからきんちゃんって呼ばれて、最初に働きはじめたスタッフもそう呼んでたし、次から入ってきたスタッフにも、みんなにきんちゃんって呼ばれてて。そのままそれがずっと、今も続いてる感じです。
 
石崎さん
谷中の飲み屋でついたあだ名が、会社でもそのままずっと続いてる、と。
 
きんちゃん
そう。そうやってあだ名で呼んでもらえる関係性が心地いいというか。飲みに行った時みたいに皆フラットな関係なのが、楽しくて。その心地よさに今も甘えているような感じです。
声かけて頂く際はみなさんも、きんちゃんと呼んでください!
 
会場
きんちゃ〜ん!
石崎さん
もうきんちゃんコールがあるじゃないですか(笑)ありがとうございます。
僕は株式会社Backpackers’ Japanという会社の取締役をやっています、石崎嵩人、イッシーって呼ばれてます。東東京をメインに、ゲストハウス(ホステル)をやってる会社なんですが、トーキョーバイクとの繋がりで言うと、ほぼすべての店舗でレンタバイクっていう形で自転車を扱わせてもらっています。
きんちゃん個人との関係で言うと、谷中だったり蔵前だったり、いろんなところで一緒に飲んでいて、本当に公私どちらとも仲の良い存在です。今日はお話できるのを楽しみにしてます。よろしくお願いします!
宮崎さん
私は株式会社HAGI STUDIOっていう会社を、トーキョーバイクの創業地でもある東京の谷中でやっています。トーキョーバイクは今年20周年ですけど、僕らはまだ10年くらい。
HAGISOっていう、元々僕が学生時代に住んでたアパートをリノベーションして自分たちで事業を始めた建物があったりとか、あとはhanareっていう宿泊施設とか、TAYORIっていう食のお店をやったりしています。
今日のフェスでは、今年の2月にオープンしたasatteっていうジェラート屋さんを出店させて頂いていますので、よかったらご賞味ください!よろしくお願いします。
僕らは、ブランドを作るベースの想いが似てる
 
宮崎さん
……そういう感じで、はい、まあとりあえず飲み友達っていう感じの3人ですかね。今日、なんで僕らが呼ばれたんですかね?
 
きんちゃん
(笑)
 
石崎さん
呼ばれた理由。確かに、何なんでしょう?
 
きんちゃん
うん、まあ話しやすいっていうことと、それぞれに想いの部分が似てるなと。
トーキョーバイクって、形としては自転車を売っているんだけど、ただ自転車を売るだけのブランドじゃないと思ってて。それがあることで、自分の暮らしに何か楽しいことが起きる。そんなハプニングだったり、人と仲良くなることだったり、お店や場所との新しい出会いがあったり、そういう色んなことのきっかけになるブランドだって思うんです。
僕ら3人はやってることはそれぞれ違うんだけど、志してるものというか、ブランドとしてのベースの想いが近いなと思ってて。だから今日は、その部分が探れるんじゃないかなって。
 
石崎さん
なるほど
 
きんちゃん
ま、でも要は単純に話しやすいからね(笑)
 
石崎さん
トーキョーバイクも、やっぱり自転車そのものを売るだけじゃなくて、自転車を通して街を楽しむこととか、自転車を超えた広がりを目指して作ってるブランドだっていうことですよね?
 
きんちゃん
そうですね。今回のフェスだって、やっぱり『自転車のイベント』じゃないんですよ。
僕たちが普段から仲良くしていて、楽しいなって思う人たちに集まってもらって、それをトーキョーバイクのユーザーはもちろん、この公園を日常に使っている方達にもシェアできたら、それはトーキョーバイクを知ってもらうためのひとつの手段になるし。
それぞれ出店してくれる方たちや、アーティストの人たちも、みなさんと交わる機会が増える。それが、今回やってみたかったこと。あとは、参加するお客さん同士も仲良くなってくれたりしたらすごく嬉しいなと思うよね。
東京を走るための自転車” があったら面白いんじゃないか?
 
宮崎さん
ずっと不思議だったんですけど、トーキョーバイクは今年で20周年じゃないですか。でも、20年前にはどういう受け止められ方をしてたのかなって。
たとえば(融資のために)銀行に行って『自転車メーカーがやりたいんです』って言っても、これだけ当たり前になっている乗り物で今さら開業するなんて、何言ってんですかって言われたんじゃないかと思うんですよ。
それでも20年やってこれたのが、確かにモノ(自転車)を売るだけじゃないっていうトーキョーバイクらしさなのかなって思っていて、気になってます。
 
きんちゃん
まずトーキョーバイクの成り立ちから話しますけど、元々僕は自転車業界の中でも全く違うことをやろうとしていて。自転車マニア向けのパーツを売ったりするウェブサイトを作ろうとしていたんです。で、そのサイトにつけた名前が『トーキョーバイク』だったんですよ。
当時僕は別に自転車マニアでもなんでもなくて、どっちかというと自転車に一生懸命な人たちと比べると、自分はちょっと違うな、と思いながら仕事をしてて。好きで好きでしょうがない人なんかは、自転車のパーツひとつひとつに細かいこだわりがいっぱいあって、それを究める方に進んでいくと思うんです。でも、なんか僕はそこまでにはなれないなと。
で、そんな時にサイトの名前をなんとなく『トーキョーバイク』にして。あ、そうか。トーキョーバイクっていう東京を走るための自転車を作ればいいんだって思った。こういうの、まだなかったから面白いんじゃないか?って、そう思いついたところからのスタートなんです。
普通、自転車メーカーをひとりで始めようなんて思わないと思うんだけど。でも、今や大企業であるホンダとかトヨタなんかも、元々は町工場からスタートしていて。最初はみんな1人から始まってるんだから、自分だってやろうと思えばできるんじゃないかって。
 
宮崎さん
結構そこ、構えちゃいますよね。普通は。
 
石崎さん
そうそう。それにやっぱり思うのが、トーキョーバイクっていう名前をつけた時から想いが一貫してるところがすごいですよね。
速く乗るためとか、長距離を走るための自転車じゃなくて、東京を楽しむための自転車っていうのを最初からイメージしてトーキョーバイクって名前をつけて、ずっとそのままやってるからこそ、実際に東京のあちこちで知り合った人たちが、こうやってフェスに出店してくれる。
まさにこの繋がりこそが、トーキョーバイクが築いてきたものなんだって思うし、最初からそれをずっと貫いているのがすごいなと思います。
もっと楽しくやっていいんだって、谷中で気づいた
 
きんちゃん
すごいのかどうかはわからないですけど、やっぱり僕らにとって大事なものって、今いる場所や自転車に乗ってくれる人たちとの繋がりで。それがあることで、ブランドが作られてきたからね。
最初の頃は、便利さとか、速く移動できることとか、そういう機能面にばっかり目がいきがちだったんだけど。
 
宮崎さん
そういうことを考えてた時期もあったんですか?
 
きんちゃん
そんな時期もありました。でも、自転車って街や季節を感じられることの方に魅力があるなって。それをブランドの軸にしようと思ったきっかけは、やっぱり谷中に越したこと。
じつは最初は事務所を自分の家でやってたもんですから、トーキョーバイクは埼玉の戸田でスタートしてて。
 
宮崎さん
へ〜!戸田スタートなんだ。
 
きんちゃん
そう、でもトーキョーバイクだからちょっと、住所が埼玉県じゃなあと思って。
 
宮崎さん
それは確かに(笑)
 
きんちゃん
だから、都内にある友達の会社の住所を借りて、そこから電話を転送してもらったりしてた(笑)
 
宮崎さん
トーキョーバイクが20周年っていうのは、その頃からカウントされてますか?
 
きんちゃん
うん。それから少しずつお客さんがついてくれて、広がり始めて。僕ひとりではやりきれないなってなったのと、あと、ちゃんと(自転車を)見てもらう場所が欲しいなと思って、じゃあ場所を東京のどこかで探そうと。
 
その時にたまたま出会ったのが、谷中。通りかかった時に、なんとなく気になったんだよね。あんまり商売にむいてる場所ではないかなと思ったんだけど、とりあえず見に行ってみようと。で、いったら、その街にいる人たちが大好きになった。
 
石崎さん
そこで仲良くなったんですね。
 
きんちゃん
谷中には、すごく楽しく生きてる人たちが多かった。世の中の『こうじゃなきゃいけない』っていう想いに縛られてなくて。谷中ってね、東京藝大が近くにあるから、自由な発想をした学生がいっぱいいて。外国人も多いし、なんか、日本の大きな流れとは全く違う空気感があるんだよね。こういう生き方でいいんだって思った。で、どんどんそれを発信しようと思って、それを続けてきた。それが、トーキョーバイクの考え方のベースになってる部分で。もっと楽しくやっていいし、できるんだっていうことを気づかせてくれた場所なんです。
 
石崎さん
谷中との出会いで、自分たちの暮らしを楽しくしていったらいいじゃんっていう気持ちが、もっと強くなってったっていうことなんですね。
 
きんちゃん
そうですね。本当にちっちゃいお店でも、楽しそうにやってて、みんながどんどん仲良くなっていくんですよ。さっきの話じゃないけど、僕の本名を知らなくたって、すごく仲良くしているくらいだから。
 
石崎さん
あだ名(きんちゃん)だけでね(笑)
 
きんちゃん
知り合って5年くらいしてから、やっと本名を知ってもらえたりして(笑)
 
石崎さん
そういう雰囲気って、谷中の街がそうさせているものなんですか? 宮崎さんも、谷中歴は長いと思うんですけど。
 
宮崎さん
もちろんそれぞれの街に面白さはあると思うんですけど、谷中には、人との繋がりを大事にする空気感があると思う。僕は今でも、学生時代にトーキョーバイクが(谷中の)坂の途中にできたことを覚えてますけど、やっぱり最初は谷中の人たちがトーキョーバイクに乗り始めて、そこから広まっていってましたよね。
 
僕らもHAGISOを、いわゆるブランディングとかコンセプトとか、そういう大袈裟なものを考えて始めたわけじゃなくて、とりあえず自分たちの日々の時間をちょっと良くしてくれそうな場所、と言う感じで始めたんですよね。で、それが谷中だった。必ずしも谷中じゃなきゃできなかったっていうわけじゃないけど、当時はそういう谷中の空気感がすごくはまってたんだと思います。
 
きんちゃん
もちろん他にも好きな場所は色々あって。蔵前とかも大好きだし、墨田区にも仲の良いお店や人がいっぱいいるんだけど、たまたまきっかけは谷中だった。で、あの街で知り合った人にいろいろ教えてもらったものが大きかったんだよね。
最短距離で移動するより、”漂う” ために乗りたい
 
宮崎さん
今日この対談をやる前に、一回打ち合わせと称した飲み会をやったんですよ。その時に話したこと、大体忘れてるんですけど(笑)きんちゃんが名言を残してたことは覚えていて。
 
きんちゃん
トーキョーバイクは ”漂うための乗り物” だっていうね。
 
宮崎さん
つまり、点と点を最短距離で結ぶ乗り物じゃないってことですよね。
 
きんちゃん
結ぶ時があってもいいけど、そうじゃなく、気になる方へ右に左に行ってもいいわけだし。美味しそうな匂いにつられてもいいし。素敵そうな人がいたらちょっとついていってもいいし。や、それは危ないか(笑)。本当にその時の気分で、自分で決めればいい。思うままに行けばいい。
 
宮崎さん
なんかその感じがすごく、谷中という街にも合っていますよね。風みたいっていうか。どこかにずっといるでもなく、さっと通りすぎちゃうでもなく、ふわっと空気みたいに漂うための乗り物だって聞いて、名言だなと思ったんですよ。
 
石崎さん
僕もそう思いました。トーキョーバイクのことはある程度知ってるつもりだったけど、きんちゃんが伝えたいことってこれだったんだって。
 
きんちゃん
僕は何かと決めるのが苦手な男なんで、いつもその時の気分で動いてて。例えば今晩のごはん何にするかだって、その時にならないとわからない。いつも漂ってる感じなんです。
 
自転車もそれに近くて、目的地に何時までにたどり着かなきゃ行けないっていう予定がないなら、別にどこに行ったっていいし、何か新しい出会いがあるかもしれないから、同じ道は通りたくない。違う道を1本入ってみると、なんとなく素敵な建物を見つけたりとか、夕方だとなんかおいしそうな匂いが家からしてきたりとか、そういうのがたまらないなあと思うんだよね。そんないろんな感情を自然に呼び起こしてくれるようなところが自転車にはあるし、それが何よりの魅力だなと思ってる。
ワンマンでやるより、会社に居場所がないくらいがちょうどいい
 
宮崎さん
そういうきんちゃんらしさが、そのままプロダクトになったものがトーキョーバイクなんですかね。
でも面白いなと思うのが、Backpacker’s Japanもそうだけど、トーキョーバイクも、きんちゃん(代表)がワンマンでやってる会社じゃないっていうところ。
 
石崎さん
ああ、そうですよね。そこは確かに面白い。
 
宮崎さん
逆に言うと、じゃあ代表は何をやってるんだろう?みたいな疑問もあるんですけど。
 
きんちゃん
いや、あの、僕は普段すごく遠慮してるから(笑)
 
宮崎さん
遠慮してるってどういうことですか?(笑)
 
きんちゃん
ほら、会社に行っても居場所がないから。
 
宮崎さん
(笑)。でもスタッフの人たち、めちゃくちゃ楽しそうに仕事してますよね。
 
きんちゃん
うん、本当に。今回のこのフェスも、全部みんなで盛り上げて企画してやってくれて。すごい自主性に溢れてるから、僕がミーティングにいちゃだめだなっていつも思うの。
 
宮崎さん
そういう会社の雰囲気は、僕らとも共通してると思うんですよ。だからそういう話題でよく飲み会で盛り上がるんですけど。
 
きんちゃん
みんなで愚痴こぼしたりしてね(笑)
 
宮崎さん
愚痴こぼしつつ、でも結局僕らだけじゃなにもできないよなってことで大体落ち着くじゃないですか?
 
石崎さん
あははは。だいたいそこに集約されちゃいますね。でもやっぱりトーキョーバイクって『自分でやってみる』とか『見方を変えたら楽しくなる』っていう姿勢がベースにあるんだなって思って。
 
自転車に乗る人にもそれを感じてほしいし、社内の雰囲気もそうであってほしいって思ってるんだろうなって。で、そういうところが僕らにとってもすごく共感できる部分なんでしょうね。
 
宮崎さん
たしかに。でも、その(自主性にゆだねた)手放しっぷりは、わざとやってるものなんですか?きんちゃん的には。
 
きんちゃん
ていうかね、もう手放すしかないの。僕は何もできないんで(笑)
 
宮崎さん
でも、代表が「俺がトーキョーバイクを考えたんだぞ!」みたいな感じの人だったら、ちょっとまた違う会社になってたと思うんですよね。20年も続いてたのかな、みたいな。
 
きんちゃん
でもね、本当にそれは思う。みんなが勝手に漕ぎ出してくれているから、今の形があるんだなって。
いろんな “友達” が、トーキョーバイクを支えてくれた
 
石崎さん
でもやっぱりこれが、ひとつの結果なんだなっていうのは感じますね。改めてフェスなんてやってみると、すごくないですか? これだけたくさんの方たちが集まってくれて。
 
きんちゃん
本当にね。なんか、きれいな話ばっかしてるのも気持ち悪いんだけど(笑)でもやっぱりそれぞれのお店にいるスタッフが、街をちゃんと楽しんでいるからこそだと思う。そこから価値観の近い人たちとの繋がりが生まれて、今日ここに集まってくれているわけだから。
 
自転車を売っていても、自転車を作ってる人の繋がりだけじゃなくて、それぞれ別のフィールドにいるけれど肝心なところは同じ人たちが集まってできあがってる。
今回のフェスも、どちらが提供する側、される側ということじゃなくて、食べるものや飲むものや音楽や、個人が興味を持って選択するものが通じている人たちがただ集まっているから、この良い空間ができたんだなって。
 
石崎さん
きんちゃんとよく話すのは、自転車に乗るようになると友達ができるっていうことで。そうやって友達が集まっていったことが、今のトーキョーバイクをみてるとすごくわかるし、それって最高だなと思うんです。
しかもそれが、『友達』という関係性でフラットにつながってるのがすごく大事。それは自転車だけじゃなくて、いろんな人とのつながりとして大事にしたい部分だなってのはよく思います。僕のやってるゲストハウスとかホステルも、そういう場所であってほしいって思うし。
 
宮崎さん
なんだかつい『ブランド』の形について考えちゃいがちだけど、大事なのはそこじゃないんですよね。
もちろんトーキョーバイクってすごくいいブランドだけど、それはあえて作ろうと思って、綺麗なコンセプトを考えてできていったわけではないというか。それだったら上手くいってなかったかもしれない。
 
そこに友達として関わるいろんな人たちの物語が重なって、気づいたら20年続いてたっていう感じがトーキョーバイクらしさなんだなって、今日のフェスを見ていて思う。今日ここにいる人たちも、多分、トーキョーバイクに憧れてるっていう感じじゃないと思うんです。
 
石崎さん
うんうん、わかります。
 
宮崎さん
まあ、実際きんちゃんの飲み友達が3分の1くらいいるのかもしれないけど(笑)
 
きんちゃん
ははははは(笑)そんな気はしてる。
デカくなることより、心地よくあること
 
宮崎さん
なんかそういう顔の見える感じ、等身大なところが、いわゆる事業計画とか、会社の評価とは全然違う、でも確かなものなんだなって。それこそ20年続いてきた証拠になってるから、勇気づけられる気がします。
 
石崎さん
うんうん。僕らからしたら、先輩でもありますからね。
 
宮崎さん
それでいいんだなって思います。
 
石崎さん
うん。別にかっこつけてやんなくてもいいんだって。
 
宮崎さん
普通なら、そこで不安になることもあると思うんですけど。もっと売れるためにはこうした方がいいんじゃないかっていうジレンマはありますもんね。ちょっと焦る瞬間が。
 
きんちゃん
それは僕にだってもちろんあるよ(笑)
 
石崎さん
あ、きんちゃんにもあるんだ(笑)
 
宮崎さん
きんちゃんにもあると聞くと安心しますね(笑)
 
きんちゃん
だけど、同時に世の中がどんどん二極化していく気もしていてね。そんな風にギラギラと、どんどんデカくなるぞーっていう人たちもいれば、このぐらいでちょうどいいじゃんって、大きくないけど心地よい広がりを作っていこうとする流れもあって。個人的には、後者の方に心地よさをすごく感じているし。
 
だからこそ今日こうやって来てくれている人や、この2人(宮崎さんと石崎さん)や、他にもいっぱい、同じような心地よさを感じてる人たちがいるっていうのは、日本中に言えることだと思うし。
 
それこそ海外でだって同じように思ってる人たちもいて、その方がみんな心地いいはずだから、もっと広がればいいのになと思ってるんだよね。
 
石崎さん
うんうん。共感しますね。
 
宮崎さん
そういう価値観は、まだまだあまり広まってないんですかね。
 
きんちゃん
うーん。それでも、そこそこ稼がなきゃ生きていけないっていう難しさはあるからね。それでも、そういう価値をちゃんと見出してくれる人は、これから増えるんだろうなって思ってる。それを信じてやっていくしかないなって。
これからのトーキョーバイクは、自転車だけじゃない?
 
きんちゃん
なんだか色々真面目な話をしちゃったけど。それにしても、この緑に溢れた中で昼からお酒を飲む心地よさったら!
 
石崎さん
すっかり気持ちよくなってます(笑)なんか、あっという間に時間が経っちゃいましたね。もうすぐ終わっちゃう。
 
宮崎さん
なんか、やっぱり最後はあれじゃないですか。きんちゃんに、この20年の感謝の気持ちを伝えてもらった方がいいんじゃないですか。もしくは、これからやりたいこととか。
 
きんちゃん
いきなりふられたね。
 
宮崎さん
全然心の準備してなかった?(笑)
 
きんちゃん
先のことあんまり考えてないんだよね、ずっと。
 
石崎さん
ちなみに純粋な疑問なんですけど、トーキョーバイクができた時って20年先のことも見えてたんですか?
 
きんちゃん
いやいや、もう全然。さっきの漂うっていう話じゃないけど、その時その時をやって来たから。ただ、今は30人くらいのスタッフが働いてくれてるから、そんないい加減じゃだめなんだけど。でもごめんね、みたいな感じでやってる(笑)。
 
でも、街を楽しむこととか、繋がってきた人たちに喜んでもらえる物づくりをしていきたいという想いとか、そういうトーキョーバイクらしさは、これから自転車だけじゃなくもっと広がればいいな、みたいなことも考えていて。
 
宮崎さん
へえ〜。
 
きんちゃん
だから実は最近、会社の名前がトーキョーバイクなのって良くないんじゃない?って話してたりするの。
 
石崎さん 宮崎さん
え〜!!
 
きんちゃん
ここまでトーキョーバイクとしてやってきたけど、自転車は全体の一部でもいいぐらいなのかなって。まだ全然、具体的には思いついてないんだけど。
 
とにかく、暮らしが楽しくなるようなアイディアが出て、それが形になっていけばいいなと思う。HAGISOもBackpacker’s Japanも、どんどん形を変えながら広がってるしね」
偶然のひらめきも、ちゃんと大事にしたい
 
宮崎さん
確かに、その後先を考えてない感じは、すごい僕らに共通してる気がしますね。まずは今楽しいことと、出会ったことがすべてだっていう。
 
石崎さん
そうそう。だって、考えててもこの先変わっちゃうし。
 
宮崎さん
定着なんてできないよね。だから本当に、出会いがすべてだと思うし。色々計画するよりも、今が楽しいことが、いちばん価値として大事なんじゃないかっていうのは、いつもきんちゃんと話してて共感するところ。
 
きんちゃん
そんな感じだから、すごいスタッフには迷惑かけてるんだけどね。でもやっぱり、ひらめきっていうのはすごく大切で。大体僕はシャワー浴びてるときにふっとアイディアが降りてきて、それが今までやってきたことと全然違うことだったりもするんだよね。そういう時に全部の矛盾点がなくなって、自分の中ではつながって、これいけるんじゃないかって思う。そういうとっさの思いつきこそ、意外と楽しかったりして。もちろん、ブランドとしてそれだけでやっていくのは難しいけどね。やっぱりそういうところはこれからも大切にしたいなって思います。
 
宮崎さん
漂う乗り物としての自転車っていう言葉にも表れてると思うけど、 その『偶然っていうものがすごく大事だ』っていう感覚こそ、トーキョーバイクらしさだなって思うんですよ。
 
石崎さん
僕も同じこと言おうと思った。
 
宮崎さん
そういう偶然のひらめきを、事業の中心に据えることって、やっぱり計画していたらできないじゃないですか。
 
きんちゃん
最初にこれやろうと思ってたものが、結果全然違うことになっても、意外とそれはそれでね。なんか、楽しみながらやれたらいいよなって思うから。
 
石崎さん
でも、たとえ何かいいものをひらめいたとしても、そのために一度決まってたことをひっくり返すのってなかなか難しいじゃないですか。そんな時には、直感を信じてくれる人の後押しが大事だと思うんですけど、その偶然のひらめきを歓迎する環境づくりが僕らの仕事にとってもすごい大事だなって思うんですよね。
 
きんちゃん
そこを信じてやっていくとね、また似たような仲間ができてきて、楽しくなっていくみたいなね。そういう循環があるから。
 
石崎さん
そうですね、それもありますね。確かに。
 
宮崎さん
それじゃあ、結局、今後の目標はないということでいいですか? 偶然に任せると。
 
きんちゃん
いやいや(笑)みんなの前でそんな風に断言しちゃうと、うちのスタッフが動揺しちゃうから。秘密にしておく、ってくらいにしておいてください。
 
石崎さん
いや、それは無理でしょ(笑)
 
きんちゃん
じゃあ、「あとはみんなに任せる」ということで。
 
宮崎さん
漂っていくと。きんちゃんはこれからも漂っていくんですね。
 
きんちゃん
たまにぽんっと勝手なこと言うよ、くらいな感じでいきます。でも、とにかく平和で楽しい世界を、ずっと作っていきたいなってね。
 
石崎さん
もう、良い流れを見つけていくっていうことだと思います。その時々で。
 
宮崎さん
そうだね。抗わずにね。そんな感じで今後もトーキョーバイクをよろしくお願いします。僕がいうことじゃないですけど(笑)
 
きんちゃん
支離滅裂ですみません(笑)ありがとうございました!