
ムーンスターの工場見学 ヴァルカナイズ製法について
Products | 2020.06.29

ムーンスターをご存知ですか?
創業140年以上の歴史を誇る、福岡県久留米を代表するスニーカーメーカーです。
「月星」という名前ならピンとくるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。上履きで履いていた!という思い出があるかたもいるかもしれません。
トーキョーバイクでは、スタッフが元々ムーンスターのファンだったことから、ムーンスターの中でもMADE IN KURUMEのFINE VULCANIZEDというシリーズのスニーカーたちをTokyobike Shopやオンラインストアで販売しています。
そのファン具合といえば、スタッフのほぼ全員が少なくとも2足以上は持っているのではないか、というほど。
2016年の社員研修では、久留米の工場見学や靴作り体験もさせていただきました。
2017年〜2019年には、トーキョーバイクとのコラボレーションシューズ、MINIMA -tokyobike Limited Edition-も発売しました。


ずっと変わらないデザインでありながら、ファッションとしての彩りを加えてくれる。
職人さんの手仕事による作りの良さは、実際に使っているなかで細部から感じることができます。
ここで改めて、ムーンスターのなかでもわたしたちが愛してやまないFINE VULCANIZEDシリーズの、ヴァルカナイズ製法について、詳しくご紹介したいと思います
大量生産、機械生産が当たり前となっている現代に、今なお職人さんたちによる手作業が工程の大半を占めているのが、このヴァルカナイズ製法です。
靴作りのどんなところに、”職人技”が込められているのでしょうか。
詳しい生産工程をご紹介します。
【1.アッパーを作る】
生地
アッパー(甲部分)には高品質で耐久性が優れている生地を使用しています。ヴァルカナイズ製法で工程の最後に熱と圧力をかけるため、ムーンスターでは一つひとつ試験を行い、様々な基準を満たしたものだけが採用されています。

糊引
ゴム糊を使用し、表材と裏材の貼り合わせや生地のほつれ止めを行います。ゴム糊を使用することで強度が増し、シルエットが綺麗に保てるようになります。

裁断
アッパーのパーツごとに刃型を用いて裁断していきます。裁断の仕方ひとつで靴の履き心地は変わってくるので、細心の注意を払い、素材の性質と効率を考慮して裁断を行います。

縫製
アッパーのパーツを縫い合わせていきます。平面の布から立体的な人の足に合った靴を作るには、熟練の技術が必要になります。手作業による丁寧な縫製によりこの靴の履き心地は支えられています。


平面の布を立体的に縫製する、熟練の技術が光ります!
【2.ソールをつくる】
原料ゴム
天然の樹液から精製された天然ゴムと石油由来の合成ゴムがあり、それぞれの良いところを引き立てつつ、悪いところを打ち消すよう配合して使用しています。


福岡県久留米市はゴム産業が昔から盛んです。
ゴム煉(バンバリーミキサー)
原料のゴムに薬品と顔料を練り機で混ぜ合わせます。
ここで硫黄を混ぜることで、最終工程で熱と圧力をかけた時にしなやかで弾力性のあるゴムへと変化します。

ゴム煉(ロール)圧延
練って柔らかくなったゴムをローラーで板状に延ばします。ローラーには平らなものと凹凸が入ったものがあり、凹凸が入ったものを使用すれば板状になったゴムの表面に意匠がつきます。

底ゴム裁断、ゴム部品裁断
板状になったゴムを刃型を用いてそれぞれのパーツの形に裁断します。


【3.アッパーにソールを取り付け靴を完成させる】
加工(成型)
アッパーにゴム底を取り付けていきます。アッパーをアルミニウム製のラスト(靴型)にかぶせ、中底に丁寧に吊り込んで形を整えます。
その後ゴム糊を塗り、アウトソールや廻しテープなどのゴムパーツを貼り付けていきますが、この時のゴムは粘土のように柔らかい不安定な状態なので作業では絶妙な力加減が求められます。
そのため今でも一足一足が職人の手によって作られています。

アッパーをアルミニウムの靴型にかぶせます。

柔らかいゴムパーツの貼り付けには絶妙な力加減が求められます。
底ゴム圧着
アウトソールを隙間なく貼り付け、剥がれないようにするため機械でしっかりと圧着します。

加硫
加工にて底付けされた靴をラックにかけ、大きな加硫缶に入れ熱と圧力をかけます。およそ4気圧で110〜130℃の熱を1時間程度加えることでゴムと混ぜ合わせてある硫黄や薬品が化学反応を起こし、粘土のような状態だったアウトソールや廻しテープが弾力性に優れ頑丈でしなやかなものに変化します。
また、加工にて施されたゴム糊がアウトソールなどのゴムパーツと強固にくっつき底剥がれしにくい靴になります。



まるで焼き物のように窯で熱されることで仕上がります。
型抜
加硫終了後に靴を加硫缶から取り出した直後はとても熱いので、しばらく放置し冷ました後、ラスト(靴型)を取り出します。

包装
歪みや汚れがないか一つひとつチェックし、検査をクリアした靴を紙に包んで箱に入れます。

いかがでしたか?
少し長くなってしまいましたが、こんなにたくさんの工程が、人の手によって行われていると知ると、何気なく履いていたスニーカーにも愛着がより一層湧いてきます。
ムーンスターでは、職人さんの数が以前よりも少なくなっていて、作れる数も限られていると聞きました。
大量生産では感じられないモノづくりへのこだわりを、暮らしのなかに取り入れてみるのはいかがでしょうか?
気になったかたはぜひ、お店にてスタッフにもお声掛けくださいね!
きっとそれぞれのこだわりや愛情をもって、ご案内させていただきます。


工程の一覧がアイコンとなっています。

2016年社員研修のときの記念写真です