TALKIN’!トーきん! 〜きんちゃんとあのひとのおしゃべり〜 ゲスト:ナガオカケンメイさん 前編

TALKIN’! トーきん! | 2022.09.09

「TALKIN’!トーきん! 〜きんちゃんとあのひとのおしゃべり〜」は、トーキョーバイクの代表であるきんちゃんが、街やデザインについて今話してみたい人と対談する、トーキョーバイク20周年記念特別コンテンツです。

 

第一弾のゲストにお招きしたのは、デザイン活動家であり、D&DEPARTMENT PROJECT代表の ナガオカケンメイさん。(以下、ナガオカさん)
昨年、トーキョーバイクが グッドデザイン ロングライフデザイン賞を受賞した際、D&DEPARTMENT PROJECTの皆さんやナガオカさんにインタビューして頂いたのが最初の出会いでした。

 

きんちゃんとナガオカさんの楽しいおしゃべりを、どうぞお楽しみください。

きんちゃん

金井一郎、tokyobike代表。スタッフからも街の人からも”きんちゃん”と呼ばれている。

ナガオカケンメイ

日本のデザイン活動家。D&DEPARTMENT PROJECT代表。『d design travel』発行人。

聞き手:トーキョーバイク田代

トーキョーバイクの製品企画担当。無類のビール好き。

 

ー ナガオカさん、今日はよろしくお願いします。
 
ナガオカさん
よろしくお願いします。
 
きんちゃん
よろしくお願いします。
 
ナガオカさん
やっと遊びに来られました。後で自転車も見せてもらえます?本気で検討したい (笑) 。
 
きんちゃん
もちろん。ぜひ、いろいろ試乗もして行ってください。
 
ー 楽しみは後にとっておいて… (笑) 今日は、前半と後半の二部制で、「ロングライフデザインとは」をテーマにお話お伺いできればと思っています。
 
前半は、今、ここ TOKYOBIKE TOKYOで開催中(*現在は終了)の、わたしのLONG LIFE DESIGN展 ~トーキョーバイクスタッフが選んだ20のモノやコト~を一緒に見ていただいて、受賞作や展示品からロングライフデザインについておしゃべりしていただければと思っています。
 
後半は、この会場の上の階にある、トーキョーバイクの事務所に移動して、もう少し抽象的に、ロングライフデザインについて”お酒を交えながら”お話できたらと思っています。

 
ナガオカさん
事務所で飲んでいいんですか (笑) ?
 
きんちゃん
大丈夫です。
 
ナガオカさん
いい会社だなー。
 
ー それではよろしくお願いします。
第一部
トーキョーバイク的に紹介されているから面白い
 
ー 昨年、ロングライフデザイン賞を受賞したのですが、トーキョーバイクの受賞の報告と同時に、過去のロングライフデザイン賞受賞プロダクトや長く愛されるデザインの魅力について、「使っていて楽しい」「ちょうどいい」「誰にでも開かれた」などのトーキョーバイクらしい切り口で紹介したいという話があがりました。
 
この展示では、ロングライフデザイン賞を受賞したモノやコトの中から、トーキョーバイクスタッフが20のアイテムをセレクトし、自分たちの言葉で紹介しています。

 
ナガオカさん
こうして、他社のモノも一緒に紹介するというのはいいですね。
 
きんちゃん
受賞作をいろいろ見ていたら、あれも使ったことがある、これも使っている、というものばかりで。だったら、自分たちでいくつか選んで紹介させてもらおうと。
 
ナガオカさん
ちなみに、それぞれの展示にある、コピーは誰が書いてるんですか?
 
きんちゃん
これは、そのアイテムを選んだスタッフが書いたコメントから抜き出してます。
それぞれが結構おもしろくて、感動しました (笑) 。
 
ナガオカさん
そうなんだ。いい企画ですね。
 
きんちゃん
コメントとしては、写ルンですとか、ポストイットとかがおもしろかったかな。
 
ナガオカさん
それぞれがトーキョーバイク的に書かれているから面白いですよね。
 
きんちゃん
そうなんですよね。個人のコメントなので、自分がどうして好きなのか、どう好きなのかが書いてある。今回の展示は、そういう視点でアイテムをピックアップしているので、自分だったら選ばないようなものがいっぱい並んでいるのも面白いですね。
 
ー それぞれのスタッフの思い出とか、愛が見えてきますよね。
「あの人のために」という想いから生まれたプロダクト。 ロングライフの秘訣はそういうところにあるのかも (ホンダ スーパーカブ)
 
ー まず目を引くのが、ショーウィンドウに展示しているホンダ スーパーカブですね。
 
ナガオカさん
僕は以前ホンダのファンサイトを作る仕事をしていました。僕はホンダが好きすぎたので、その仕事の中でホンダコレクションホールにある車全てに乗るというコンテンツを自ら企画したんです。だからツインリンクもてぎ(現 モビリティリゾートもてぎ)にあるホンダの車には大体乗りましたよ (笑)。
 
ー それはすごい。ちなみに、このスーパーカブもホンダコレクションホールから来たんですよ!
 
ナガオカさん
展示している車やバイクは全部動くからすごいよね。
スーパーカブは本田宗一郎がお蕎麦屋さんのために作ったバイクなんです。マーケティングから生まれたプロダクトではなくて、「あの人のために」という想いから生まれたプロダクト。ロングライフの秘訣はそういうところにあるのかもしれませんね。
 
きんちゃん
クラッチの切り替えを片手で出来る、おかもちを持ったまま運転できるっていうところが当時としては画期的だったわけですよね。
 
ナガオカさん
スーパーカブは、本田宗一郎が関わったプロダクトの中で、唯一現行のラインナップに残っている物らしいです。60年も前に作られたものが、基本設計や精神は変わらずに、そのまま作り続けられているというのは本当にすごいことですよね。
 
きんちゃん
ちなみに、このスーパーカブは、今回の展示を開催するにあたって僕が選んだんです。
 
一同
(笑)
 
きんちゃん
なぜ選んだかというと、スーパーカブは世界中の人々を豊かにしたと思っているんですね。
15年前にベトナムに行った時に印象的だったのは、道路が一面バイクだらけで、その光景も凄かったんだけど、彼らのほとんどがスーパーカブに乗っていたという景色だったんです。 壊れないとか、燃費がいいとか、道が悪くても走りやすいとか、いろんな環境で選ばれていることが素晴らしい。
 
自由に移動が出来るということは物質的にも精神的にも豊かになることだと思うんです。 そういう意味で、このスーパーカブというプロダクトは、日本から生まれたプロダクトの中で一番世界中の人々を豊かにしたんじゃないかと思っているんです。
 
ナガオカさん
ほんと、その通りですね。
重心が良い感じ。美しいなって思う。(CH24/ Yチェア)
 
ー ナガオカさんはYチェアをご自宅にお持ちなんですよね?
 
ナガオカさん
そうですね、全部で10脚くらい持ってます。
 
きんちゃん
10脚も。
 
ナガオカさん
家具としてのデザインも好きだけど、椅子として好き過ぎて。
以前、D&DEPARTMENTでは、座面のペーパーコードの張り替え実演をして頂いたことがあります。メーカー公認の日本人の職人さんがいて、複雑な工程でしたが大体1時間くらいで張り替えが出来ました。
 
ー ペーパーコードは座り心地もとても良いみたいで、これがリペアも出来るというのが素材として面白いですよね。
 
ナガオカさん
かつ、15年とか20年くらいは普通に使えるんですよ。
 
ー 耐久性もしっかりあるんですね。
 
きんちゃん
こうやって見てみると、やっぱり重心が良い感じですよね。椅子って背もたれしかないと後ろに寄ってる感じがするけど、肘掛けとのバランスなのかな。美しいなって思う。
 
ナガオカさん
これはね、中国の伝統的な椅子からデザインの着想を得てるんですよね。って、スタッフさんのコメントにちゃんと書いてあった (笑)。
 
きんちゃん
サイズ感もいいですよね。日本人が使ってても違和感がないし、どこに置いても収まる感じがとても良いですよね。
観光地に行ってから買って撮るっていう新しい使い方になりましたよね (写ルンです)
 
ー この「写ルンです」は貴重なファーストモデルなんですよ。
 
ナガオカさん
おお、すごい。みなさんが生まれたときにはありました?
 
ー 僕が生まれたときには、まだなかったみたいです。
 
ナガオカさん
僕とか、きんちゃんはこれが出てたときには、もう普通に使える大人だったわけですが、それはもう衝撃。衝撃でしたよ。
 
きんちゃん
衝撃でしたね。樹木希林さんのCMがとても印象的で (笑)。
 
ー レンズ付きフィルムという発想がすごいですよね。
 
きんちゃん
今だと、「リユースできない」というのはエコじゃないかもしれないけど。当時はカメラ持ってないとか、持ってても大きくて重いとかもあったからね。今で言うスマホで取るみたいな感覚だったんだろうな。
 
ナガオカさん
観光地に行ってから買って撮るっていう新しい使い方になりましたよね。
 
きんちゃん
カメラってどっちかっていうと、その家の、ある意味宝物のような高価なものとして扱っていたから、こんな簡単なもので撮れるんだって。
 
ナガオカさん
まだ現像に出してない写ルンです、家に何個かあるんですよね (笑)。
 
一同
おおー、お宝ですねー (笑)。
 
ナガオカさん
いつか現像にだしたら、何かタイムカプセルみたいな感じで楽しめるかなって。
 
きんちゃん
それも、うちのスタッフのコメントにありました。タイムカプセル。
 
ナガオカさん
あ、本当だ。さすが (笑)。
第二部
誰にも言ってない僕の中のロングライフデザイン
 
ー 後半は、ここトーキョーバイクの事務所に場所を移し、お話聞かせていただければと思います。
 
きんちゃん
ナガオカさん、ビールですか?
 
ナガオカさん
あ、いただきます。(トーキョーバイクスタッフを見回して)え、みなさんは?
 
トーキョーバイクスタッフ
乾杯だけ、ご一緒させてください。
 
ナガオカさん
みんな飲むんじゃん。素晴らしい (笑)。
 
きんちゃん
それでは、ナガオカさん、今日はありがとうございます。乾杯!
 
一同
乾杯!
 
ー では、乾杯もしたので、後半はじめさせてください (笑)。
 
ナガオカさん
なんか、いっぱい喋っちゃいそうだな…。
ー 先程、展示を見ながらお話も聞かせていただいたんですが、改めてロングライフデザインとは?という、少し抽象的なテーマについてお伺いしたいと思っています。
 
きんちゃん
ナガオカさんは、それをずっと考えてきている方だからね。
 
ー そうですね。もちろん、過去にもたくさんお話をされていると思うのですが、これまで活動されていて、ナガオカさんの中でも少しづつ変わっていってることがあれば、そういった事もふまえてお話を聞けたらと思っています。
 
ナガオカさん
そうですね。たぶん、本社側 (D&DEPARTMENT PROJECT) のロングライフデザインと、僕 (D&DESIGNおよびナガオカさん個人の活動) のロングライフデザインはもう違っているんです。今日の対談のレジュメをみたときに、この場でロングライフデザインの話をすることに運命的なものを感じて、いま誰にも言ってない僕の中のロングライフデザインをお話できるなって思いました。
 
一同
おおー。
 
 
後編へ続く。