TALKIN’!トーきん! 〜きんちゃんとあのひとのおしゃべり〜 ゲスト:ナガオカケンメイさん 後編

TALKIN’! トーきん! | 2022.09.09

「TALKIN’!トーきん! 〜きんちゃんとあのひとのおしゃべり〜」は、トーキョーバイクの代表であるきんちゃんが、街やデザインについて今話してみたい人と対談する、トーキョーバイク20周年記念特別コンテンツです。
 
前半では、TOKYOBIKE TOKYOで開催していたわたしのLONG LIFE DESIGN展 ~トーキョーバイクスタッフが選んだ20のモノやコト~を見ながらロングライフデザインのプロダクトについてをおしゃべりしたきんちゃんとナガオカさん。
 
後半は、トーキョーバイクの事務所に移動して、お酒を交えながら今ナガオカさんが考えるロングライフデザインについてをおしゃべりしていきます。
 
どうぞお楽しみください。

僕の中で、もうロングライフデザインって終わっている
 
ー まずは、ロングライフデザインってどんなものなのでしょう?
 
ナガオカさん
まず、ロングライフデザインって、そもそもちゃんとした商品じゃなきゃいけない、と思っています。
使いやすかったり価格が手頃じゃないといけないということ。それと、流行のような他力をあてにしないということ。この二つが大きいですね。
大体みんな流行に乗ろうとしたり他力をあてにしたりするんです。そういうものはロングライフデザインとは言えない。
さらに、ロングライフデザインかどうかの評価は、生活者がそのプロダクトやサービスを使い続けた時間が証明するものでもあるとも思っています。一般の生活者が長く「これいいな」と使い続けたものがロングライフデザインとしてとらえられるべきかなと。
トーキョーバイクがロングライフデザイン賞を取ったのは、一般の消費者がいいなと思った時間の評価ですよね。
 
きんちゃん
長く一般の人の生活に寄り添ってきたものに対する評価でもあるわけですね。
 
ナガオカさん
でも、僕の中で、もうロングライフデザインって終わっているんですよ。すでに。
 
一同
(動揺)
 
ナガオカさん
2000年からロングライフデザインと言ってきて、今は2022年になって、もうみんながモノを大切にしようとか、直して長く使おうとか言い出している。
当時はレストランで無農薬やオーガニックの野菜を使うことは「コンセプトでしょ」とか「そんなことが出来る訳ない」とかと言われていたのに、今は実際に多くのお店で使われていて、もう「当店では無農薬野菜使ってます」って書くことにカッコ悪さが出てきている。そんなの当たり前じゃんって。
 
同じようにすでにロングライフデザインが当たり前の時代になっている中で、「じゃあ、これからどうしようか。」って段階で、ロングライフデザインを意識しながら、次の時代の言葉を作らないといけないなと思っています。
 
Gマークの中のロングライフデザインって、プロダクトデザインの話だったんですよね。それがだんだんと形のない物や思想に変化していって、僕の中ではもうデザインという言葉の意味が変わってきている。
 
さっきの「当店は無農薬野菜を使ってます」というのが恥ずかしくなるように「ロングライフデザイン」っていうのを言わないで、ロングライフデザインをやり続けるっていう時代になっていくと思うんです。今、僕らは「つづくをつくる」っていうコンセプトと、商品を作るときには「もののまわり」という考え方で販売しようというのがあって、これがロングライフデザインっていう、今まで20年間で自分たちが作り上げてきた思想とぶつかってきちゃっている。
デザインって堅苦しいことではなくて、もうちょっと植物のように、自然に即した考え方なんじゃないかと思っていて、デザイン言語じゃ語れなくなってきている。
 
で、実験的に作ったのが d news aichi agui です。 僕も言葉で説明できないから自分でちょっとお店やってみようと。そうすると、明らかにデザインの言語が変わっているから、これどうしたらいいんだろうっていうのが、今まさに考えていることです。
デザインとは物の形の話じゃなくて、物の形を司る周辺の話になっている
 
ー 今は全然違う、差というか、衝突が生まれているんですね。
 
ナガオカさん
今は形のない状態のものをデザインって呼んだ方がいい時代になってきていると思うんです。
昔はみんな物のことしか見てなかったから、誰がデザインして、こういう素材でできていて、どこで作っていて、みたいな情報でみんながうっひゃーって買っていた。
 
今はもうそんなことは全然響かない。今は「もののまわり」にある体験やコミュニティ、サービスがデザインの輪郭を作っていって、(デザインは輪郭化しているので) デザインとは物の形の話じゃなくて、物の形を司る周辺の話になっているんですよね。
 
自転車でいうと、昔は本体の形がデザインだったと思うんだけど、今は自転車に乗ったときの心地よさとか、気持ちよさがデザインになっている。そういう点で、トーキョーバイクは、乗ったときの風を切る気持ち良い感じ、これがデザインだって体感出来るブランディングをしていて、きんちゃんたち上手だなと思っています。
 
デザインを流行に合わせてバリエーションを増やすというよりは、もう少し本質的な自転車の楽しみ方を伝えていて、そこが一番手間がかかるじゃないですか。
 
きんちゃん
そうですね、色々とバリエーションを増やせないジレンマもありますけど (笑)。
 
今の話を聞くと、例えばご飯食べに行ったり、飲みにいったりするときも、大事なことは単に食べ物の美味しさだけじゃないですもんね。お店にいって、どれだけ楽しい気持ちになれるかとか、色んな人と話出来るかとかが大切でそれも含めていいお店だなと感じるのに近い感覚ですよね。
 
ナガオカさん
美味しそうなお店って、そこにはもうほぼほぼデザインが無いほうが良いし、デザインがあったとしても、そういうことをちゃんと考えたデザインがある。だいたい、そういう美味しさとか本質を、デザインがみんな壊してきたような気がしてしまって。
 
だから、ロングライフデザインというのが、自分の中ではもう今までやってきた考え方とは違うなと感じています。
1年前まではそんなことも思っていなかったんだけど。
 
ー どういうきっかけで考えが変わっていったんですか?
 
ナガオカさん
自分でお店をやって、デザインってすごい邪魔してたんだなって。壁になっていたんだなと思って。デザインっぽいお店があると、おじいさんとかおばあさんとかが、ここは私が行く場所じゃないってなってしまう。ターゲットを設定した上で商売してるものだとしたら、なんだかなーってなってしまったんですよ。
 
もうだから、今僕のお店のターゲットは中学生です(笑)。ポップとか解説とか、お店に貼ってあるものはみんなルビが振ってあります。しかも、大人が大人に話すような文章はやめているんですよね。だからといって、「皆さん手に取って、触れて楽しんでください。」みたいなことじゃなくて、わかりやすいようにというか…。
それもちょっとわかんないですけど、実験してやってるんです (笑)。 デザインって、ほんと難しいなと (笑)。
 
一同
(笑)
 
ー これまでずっとデザインについて考えてこられたからこそのお言葉ですね。
トーキョーバイクもやっぱり最初は自分の友達のためだった
 
ナガオカさん
いま、僕のスマホには「これからのデザイン」というフォルダーがあって、これはそうだなってものをいろいろ写真に撮ってるんですけど、ほとんど手書きのデザインとかなんですよね。
 
ものを作るときにパッケージデザインとか考えるじゃないですか、それってすごく邪魔で。もちろん、ないと機能しないし、なにかを知らせる必要はあるけど、昔のようにマスメディアの上で競争するためのパッケージデザインをつくる時代ではないと思ってるんですよ。
 
さっきも展示のところで話したけど、ホンダのスーパーカブって、そのお蕎麦屋さんのためだけにデザインされているから、他の人たちのことなんか考えてない。その人のためにいろんな事を考えて改良を重ねた結果、これ以上改良する余地がないってなって生まれたカタチなんですね。
 
今って、架空のターゲットを設定して量産するじゃないですか。そういうもののデザインって「これからのデザイン」ではないんじゃないかなと。
だから、トーキョーバイクのスタッフの人たちが、色々と自転車をカスタマイズして自分好みにしてる感じはすごくいいですよね。たまらない (笑) 。
 
きんちゃん
本当に自分のためだけにやってますからね (笑)。
 
ナガオカさん
今って量産すると、そういうことしちゃ駄目とか、安全性が削がれるとかになっちゃうから。だから、カスタマイズとかの面白さって、すごい宝物なんだなって思いました。
 
きんちゃん
最近、つくづく思うことは、やっぱり誰かの熱がないとダメというか、「みんなで話して決めることぐらい、怖いものはない」みたいに感じていて。
 
ナガオカさん
そうですね。
 
きんちゃん
誰かの強い力でこういうことやりたい、これ作りたいとか、そういうことからスタートするんじゃないかなって。
 
今のカスタマイズの話も、自分の自転車だから、もっとカッコよくしたいとか、こうしたらどうなるんだろうとか、そういう思いでぐっと作っていくわけじゃないですか。それを、なんとなく見えない人に合わせてあーだこーだっていうのはどうかなって。
 
トーキョーバイクもやっぱり最初は自分の友達のためだったんですよね。あの頃、僕は40手前だったけど、友人たちはもう少し若い人たちが多くて、女性も結構いたかな。そういう人たちって生活のために一般車、いわゆるママチャリに乗っていても、遊びのためとかには自転車に乗っていなくて。市場にはもちろんロードバイクとマウンテンバイクはあったけど、普段使いするには敷居の高い自転車だったし。そういう人たちがもっと街を楽しめる自転車があったら、生活が楽しくなるんじゃないかなという具体的なイメージはありましたね。
輪郭がぼやっと見える。そういうデザインでありブランドのほうがいいなと思う
 
ナガオカさん
あとは、先程も話した「もののまわり」。
 
さっききんちゃんから聞いたバイク銭湯※1とかコーヒータイムメンテナンス※2の話もそうだけど、自転車のまわりの情報があって、そこからトーキョーバイクの輪郭がぼやっと見える。そういうデザインでありブランドのほうがいいなと思う。
それをやってるから、きんちゃんすごいなと。
 
きんちゃん
みんなが勝手に始めていることなんですけどね (笑)。
 
ー ブランドの輪郭というと、これまで、僕らのブランドをひとこと、ふたことで表すことをしてこなかったんですが、でも、色んな人に伝えたいと思ったときに、どうするのがいいんだろうと思っていて。
 
最近は、いろんなキーワードや周辺の情報を集めていって、そこからブランドの輪郭がぼやっと見えてくるような伝え方もあるかなと、試しているところなんです。この企画も、きんちゃんとゲストのおしゃべりから、トーキョーバイクというブランドの輪郭がぼやっと見えてくるといいなと。

 
きんちゃん
ブランドを表す言葉って、ひとつじゃないのよ。
その人の暮らしの中のいろんなことを摘めるから良いというか。もちろんなんとなく方向性はあるんだけど。ざっくり一言で言うと「楽しい」っていうね。でも、要素がたくさんあるものを一言でまとめようとすると逆に狭めてしまうってことですよね。
 
ナガオカさん
それ(一言でまとめようとすること)って、日本の資本主義経済が元気だった時代の、大量に生産するとか、ある程度の売り上げを稼ぐとか、成功するとか、そういうベースに基づいた発想ですよね。
 
これまでのデザインって資本主義の経済優先型の発想で、憧れを作ってメディアが焚きつけて、これ買ったらすごくオシャレとか豊かじゃん、みたいなことを言ってきたけど、みんな買い飽きて、もう買わないとか東京から逃げる人がいっぱい現れて、そんな時にデザインってなんなのってなりますよね。
 
きんちゃん
オリジナルのいいものを作り続けることでも、それを売り続ける難しさですよね。新しく買ってもらわないと会社が成り立たないみたいなことがどうしてもあるわけで。今までなくて、新しい価値があってやり続けられるといいんですけど、なんか、今あるものをちょっとだけ変えて、やっていくのは違うなって思いますね。
 
ー ナガオカさん、そろそろお時間が…。今日は貴重なお話をありがとうございました。
 
ナガオカさん
ちょっといろいろ喋りすぎちゃったかな。
 
きんちゃん
いや、本当に面白いお話をありがとうございました。
ナガオカさん、よければこの後もう一軒。
 
ナガオカさん
いいですね。いきましょう!
 
 
取材終了後、お互いに大好きなホンダの話が尽きない二人。そのまま清澄白河の街へ繰り出していきました。

 

 

※1バイク銭湯

tokyobike Soil Yanakaで実験的に行われている自転車洗車サービス。現在アップデートのためお休み中。

※2コーヒータイムメンテナンス

以前、谷中のお店にコーヒーを提供するバーカウンターがあった際に行っていた、”コーヒーを飲んでいる間にメンテナンスをする”というサービス。現在はバーカウンターが無くなってしまったためお休み中。